tete-a-tete

夕凪ショウの同人活動の他、行った場所や観た映画などの記録です。

映画『her』とか。

◆映画『her』を観ました。
 トランセンデンスは正直いまいちだったけど、herはほんとに良かったです。同じ「人工知能と愛」ネタでもここまで違うのかと…!
 「観客を俺の力でどう楽しませてやろうか」って思考が見え隠れするエンタテイメントと対照的に、「僕の考察はこうなんだけど、君はどう思う?」って姿勢の映画でした。
 暴走する”ロボット”なんてイメージは古臭くて、発達したテクノロジーこそ、私たちの生活にすっと入り込んでくるもので、物理的にではなく観念的なレベルの変化をもたらすものであって欲しい。
・誰と誰が付き合って云々という話題に終始するのは若干うんざりしますが、最後に彼女が”旅立ってしまう”のは、実にそれっぽい結末で非常に満足感がありました。
・複数の人間と同時に会話するのは、SNSやチャットであれば私たちも変わらないと思ったし、『2人(あるいは相手は自分だけを見ている)』に固執するのはちょっと違和感が…。自分だけを愛するA.I.が複数いたところで、彼はあれほど拒絶反応を示さなかったのでは。
・人間の言葉では人工知能の感覚を表現できない、というのも、「アイの物語/山本弘」にあったのと同じアイデアで、でも言い回しが異なる以上に言語の性質自体が異なる(彼らはおそらく言葉ではない言語を介している)ところで、さらに磨きのかかった表現だったと思います。
・あと、本編とは関係無いのですが、作中で2回ほど「後ろから抱きしめて」の意味で"spoon"が使われてました。スローターハウス5での「スプーンのように折り重なって」という比喩表現を、著者の手柄だと思ってましたが、元々ある表現なのだなと知ってちょっとがっかりなような。でもspooningはロマンチックな言葉で、それを捕虜に用いたところが、皮肉が効いてて良いのかも知れませんね。

◆『her』の作中のゲームを開発したデイヴィッド・オライリー氏のゲーム、『Mountain』がiOSでプレイできます。

山になるアプリで、山には歯とか消火器とかいった風情の無い物たちが降ってくることが多いです。時折現れる詩的な文章が全て一人称なのも、夢みたいで面白いです。

◆『失行・失認の評価と治療―成人片麻痺を中心に/エレン・シーブ』を拾い読みしました。

当たりでした。夏コミの題材として考えてはいたけど、その概念を言い表す言葉を知らなくて、もやもや〜っとしてたことの答えが書いてありました。
 知覚=感覚+認知であるとか、
 感覚を意味のある知覚に転化することを統合と呼ぶ。感覚は正常なまま知覚が異常になってしまったとき、感覚を知覚に統合できなくなったとき、それを失認と呼ぶ。治療としては感覚統合訓練というものがあり、これはセラピストがコントロールされた感覚入力・刺激を提供するというもの。…とか。

◆上の本に関連して、この論文も面白かったです。
【コンピュータと人間の距離-認知科学における意識の問題】