tete-a-tete

夕凪ショウの同人活動の他、行った場所や観た映画などの記録です。

最近のこと_人体を見るみっつの段階と、知らないものは目に見えないことについて

1.おことわり
忙しい忙しい、と言って何をしていたかといいますと、人体についてのお勉強をしていました。
こう書くと私がどこの所属かということがいよいよはっきり分かってしまうかと思うのですが、それをあくまでも伏せようとしているのには理由があります。
本来あまり人前でべらべら話すような内容ではないことも混じっているかも知れないのと、ネット上でこんなことを書いていて不謹慎だ、と通報されると困ってしまうからです。
じゃあなんでブログに書いて公開するのかといいますと、これは私が勉強する中で思ったり感じたりしたことで、もし私が外部の人間だったらそれは知りたいと思うし、私自身の、もしくは誰かの創作や思考のヒントになれば、という思いからです。
多少ふざけた内容を載せていたとしてもそれは、決して不真面目に不謹慎にやってるわけではないので、ご理解いただきたいです。
また、間違った内容を知ったかぶりしているように見えてしまった場合など、遠慮なくご指摘いただければすぐに対応いたします。


2.人体を見る三つの段階について
では本題。
人体についてどういうふうに学習したかというと、それは大きく分けて三つのレベルで分けて行われました。肉眼で見えるレベル・顕微鏡で見えるレベル・目には見えないレベル、のみっつです。
基礎学習ですのでまずは、どこに何があるか、ということを頭に入れるのが第一になります。三つの段階を並行して学ぶうちにそれが体系的に理解されるということです。
例えば胃であれば、まず肉眼で「ここに胃がある、どこへ繋がっていて、どこと接している」などということを確かめます。その後顕微鏡へ移ります。顕微鏡では胃を薄くスライスしたものを拡大して見ます。すると、「胃の粘膜の表面にはこういう細胞があって、こういう並びをしている」といったことがわかります。そこから先は目に見えないところです。胃の粘膜の細胞から分泌されるのはどういう物質なのか、それはどうやって生成されるものなのか、また分泌を促すにはいかなる化学反応が体内で起こっているのか、などという化学的な事柄を学びます。
このようにスケールを変えて一つのものを見ていくわけなんですが、先も書きましたように「こういうものが存在する」ということを知るのが主で、勉強の内容としては、まずとにかく沢山の名前を覚えることが重要です。骨のひとつをとっても、その先のでっぱりや表面のザラザラにひとつひとつ名前が付いています。またそれぞれの細胞に名前が付いていますし、粘膜表面の凹みにすら名前があったりします。それから目に見えない化学物質についても、式や名前でひとつひとつ表されています。肉眼や顕微鏡のレベルでは実物をスケッチする事ができますが、目に見えないものは文字や記号で代用されます。化学物質については名は体を表すというか、その構造そのものが名前であったりしておもしろいですね。


3.知らないものは目に見えない
ちょっと顕微鏡の話に飛びます。
顕微鏡を使う実習では、顕微鏡をのぞきつつ様々な組織をスケッチします。実際にスケッチした画像をうpできれば(しちゃいけないかもしれない)わかりやすいのですが、提出後まだ返却されていないので保留とします。
スケッチは数ヶ月で100枚くらいやったでしょうか、そうすると初めと終わりでかなり違いが出てきておもしろいです。
初めの頃は「スケッチって太さは一定の線もしくは点で描かないといけないんじゃないの?」とかなり戸惑いましたがそうではないようで、塗りつぶしたりしても良いようでした(この辺は指導方法によるのかもしれませんが)。
また見えているものを寸分違わず描く事が重要だというよりも、模式図に近いといいますか、「こう見えるはずだ」ということをダイジェストで描きました。一枚のプレパラートの中から観察したい対象で一番良く見える物を探し出して、それを一枚の紙の中にうまく収まるように切り貼り合成して描くわけです。そうすると人為的なゴミなどは無視されます。色鉛筆を使うのですが、染色の色ムラも無視して、核は紫色に染まるはずなので必ず紫色で描く、といった風にします。
これは私にとってなかなか新鮮な描き方でした。普通デッサンやスケッチといえば、目に見えるものをそのまま描き写すのが重要です。でもそうではないのです。顕微鏡をのぞいて描き始める前に、そこに何があるのか何を観察したいのか、ということを知っていないと描けないのです。目に見えるものをそっくりそのまま描いていれば、その時にはそれが何か分かっていなくても、後で見てみれば実は観察したかったものも描かれていた、という事もありますが。
そもそも顕微鏡で見えるのはほぼピンク一色に染められた断面図です。この断面図というのも曲者で、これこそ元の立体構造を想像できないとわけがわかりません。
どこかで、ジャングルで育った人が人間界に連れてこられた時、部屋から窓の外を見てもぐちゃぐちゃの色の洪水にしか見えなかったが、学習を積んだ後にはそれが木や車であるとわかるようになった、という話を聞いたことがあります。
それと同じで、そこに何があるかを知らなければ、それが目の前に存在したとしても見えない、ということです。これが私にとっては驚きでした。意識しなければ情報は入ってこないというのは考えてみれば当たり前なんですが^^;

ただこの知らないものは目に見えない、目に見えるためには知らないといけない、というのは「診る」ことを仕事にするにはとても重要ですね。

長くなりましたのでここでいったん切ります。