tete-a-tete

夕凪ショウの同人活動の他、行った場所や観た映画などの記録です。

音とイメージ‐1

怪獣の名はなぜガギグゲゴなのか/黒川伊保子 を読みました。
ほんまかいな、と思うところはなくはないのですが、面白かったです。

◆私は普段ボカロ曲ばかり聴いているのですが、その多くが初音ミクという同じ音源を用いているので、お気に入りの曲を探す時には調声における個性を意識します。(もちろんライブラリごとの特徴がまずあって、ユキちゃんでは外国語風の子音が小学生というキャラクターに反して大人っぽい印象で、ミクさんだと母音を伸ばすところや「な行」の発音がかわいかったりします。GUMIならざらつきのある声質に親しみがわきます。)
P単位でも調声の違いはありますが(ミク廃になると調声によってPが聞き分けられるとか…(^‐^)、曲単位でも目立つものはあります。
私自身は聴くばかりで、楽器としてのVOCALOIDには詳しくないので、何が起こっているのかはよくわからないのですが…。例えば、不始末さんの「野菜サラダ」では歌唱のうちK音、S音、T音に重なるように、金属の細い針で引っ掻いて弾くような音が聞こえます。livetuneさんの「リラホルン (kz's Drillhole In My Brain remix)」ではS音が強調されているようです。
こういったサリサリと耳に心地よいノイズが好きなのですが、話が飛ぶようですが、私は果物では梨が好きです。柔らかい洋梨より、繊維質がザリザリ、ジャクジャクしたものが特に。イチゴやリンゴみたいにいかにも可愛らしくはない、というポジションも好みなのですが、歯触りが心地よいです。今回の本では「S音は、木綿の布のようにべたつかず、空気感のある音」とも説明されていて、静かなノイズが心地よいのは梨を食べている時の感覚と近いからかなぁと、思ったりしました。
そのことばを発音する時に、私たちが喉と口の辺りで感じる物理的な刺激は、人類にとって普遍的なイメージをもたらしている――本では『ことばの三要素は意味、文字、音』『この世のものは、すべて私たちの脳にとって「それらしい」音をしている』『ことばの発音構造がことばの質感であり、脳に浮かぶ意識の質感でもある』『ことばはこの世で一番短い音楽』とありました。それなら、ものを食べる時の感覚も同じかもしれません。
真偽はどうあれノイズと梨、という組み合わせが詩的でいいですね( ̄▽ ̄)ノ
音楽を聴くのは、低音が効いていたり、音圧が高かったり、心地良いノイズもそう、音というより、身体への刺激を味わうマッサージのような快感がある…どういうことかなぁと思っていましたが、音は物理現象に沿うから、当然のことだったんですね。
音のイメージを抜粋すると、・S音はレモンを絞る ・N音、M音は私的で内的、女性的。開口で自然なあー、閉口で自然なんー ・R音は弾性、リズム、法則、理知的、重さ ・Yは明るさの中の柔らかな光、Vは仄かな暗がりの中のぼんやりした光 と書かれていました。
◆音、味、文字や数字に、色のイメージがあるという話をすると、時々、共感覚なんですか?って聞かれるのですが、どうかよくわからないです。S音は風の抜ける爽やかな音なので、さ行は水色系、というのは、一般的になりえないでしょうか。Aははっきりと外へ向かう音なので赤、「に」は停滞する、女性的なN音なので橙色、というように、文字の形や使われる場所でのイメージ(トイレのマークで女が赤、男が青、のような)に加え、音による連想で、成り立っているのではないかと。…小学生の頃はら行が魔法っぽくて大好きだったのですが、口にした時の呪文のようなリズム感が原因なのかなぁ。
もし、音や色やイメージの関連が一般的なものであれば、絵や曲について「これがこんな感じですごく良かったんだ!」っていうのをもっと思うように他人に伝える、はっきりと記録に残す方法を見つけられるのでは…。曲を聴いて紹介文を書いたり、曲を聴いてサムネ絵を描いたりする私にとっては興味のわくところです。(ミクトロニカが好きなのは、単純に心地よいだけでなく、音や言葉の取合せが不思議で、色はもちろん様々なイメージをぐんぐん引き出してくれる感覚が楽しい、というのも大きな理由です。)
珈琲を飲み比べした時に、黄土色だとか四角いとかいう表現しかできないのがもどかしいです。(口がエの形(四角い)になるような渋味が感じられる、という感じかも?母音のeは遠ざかるイメージ、とも本にありました)ただ、他の方も、飲み物を表現するために、味の感じ方の時系列のグラフとか、「臨場感がある」「輪郭がはっきりしてる」という言葉を使ってらして…ワインの味を表現する時は、言葉のパレットが決まっていて、果物の熟す過程をなぞるのだったかな…?うろ覚え。
読んでてふと思ったのが、goodという単語と、親指を立て他の指を握って突き出す仕草は実にそっくりそのまま発音を示しているようだということ。
それから、マレー語の音にはN音やM音、同じ音が2回繰り返されることが多いようで可愛らしく聞こえる、という話をしたら、英語ではクロコダイルなのに日本語のワニは可愛いねぇと返された事も思い出しました。

◆他に、母音と人称についての話があったのですが、長くなるのでここで切ります。

◆文章を読んでいて、浜辺のガラス片を拾いたくなるような、あ、いいなって表現に出会いますが、スパッと表現された歯車のようにかっこいいものと、詩的で甘やかでまろやかなものと二種類あって、この本では後者が主でした。以下メモ
心地よさの色合い/考察の目が粗すぎる/混み合う/発火/感性の端子/足しこんで/データの粒の不揃い/会話は記号化されたコトバの演算/男性を高揚させる負の美学