tete-a-tete

夕凪ショウの同人活動の他、行った場所や観た映画などの記録です。

「ビールと泡」覚え書き

ボードゲーム「ビールと泡」を作るにあたって考えたり準備したことの覚え書きです。(ゲームルールのデザインはぐるさん担当なので、コンポーネントのデザインなどの話になります)

・テーマ決め

 「ポミケ中止」の後、次に何を作りたいか?と考えたとき、自分が好きなもの、描きたいものとして思い付いたのは「中世ヨーロッパ世界観のメイド」だったのですが、うまくゲームデザインに至らず断念しました。ゲムマ2021秋で、お向かいのサークルさんが「サモンオブじじい」というゲームを出してらしたのですが、これは「じじい」だけでもう楽しいんですよね。題材だけで楽しいものがいいな~と思ったとき、「ビール」ならそれだけでテンション上がる!となり、決まりました。当初はディスクを輪投げのように棒に差して重ねることを考えていましたが、後々にジョッキに入れる方針に。

コンポーネントの調達

 ビアジョッキと中に入れるディスクを探し求める旅が始まりました。ジョッキについては、Amazon楽天ですぐに見つかったのは、レジンを流し込んでアクセサリーやドールハウスに使うためのミニチュア用のプラジョッキでした。しかし手に取ってみると結構小さくて、ゲームには使いにくい。そこで検索範囲をAmazonUSに広げ、使えそうなものを5種類くらい注文。そのうちのひとつ、Beistleというパーティグッズを作っているアメリカの会社のものがちょうどよかったので、使うことにしました。AmazonUSでとにかく注文して数を集めます。そのうちの一つは人間が余裕で入れるくらいのクソデカ段ボール(中身はスカスカ)で届いてアメリカを感じました。最終的に家の一角がプラジョッキの箱で埋まりました。このジョッキ、再販の際には、Beistleに直接メールしてまとまった数を売ってもらえないか問い合わせました。小売り業者ではなく日本でボードゲーム制作をしていて…と説明し、どう受け取られたのかは謎ですが売ってもらえることになりました。よかった。

 ジョッキに入れるディスクについては、ジョッキに合わせた大きさ、厚み1cm 直径4cmほどの円盤が必要でした。よくある黄色い木製トークンは小さすぎました。海外のトークン販売サイトも探しましたが同様のものしかない。ジョッキに入れたときにビールらしく見えるためには、トークンの側面が黄色い必要があり、紙製チップでは適しません。アクリルについては知人から厚みがあると単価が高くなりすぎてしまうと聞きやめました。教材用の木材を学校に卸している木材屋さんで、近いサイズのものは売っていましたが、桜の木だったり、物が良すぎてゲームに使うにはそぐわない。とりあえずAmazonで木製ディスクを5種類くらい注文して、サイズや枚数のテストを重ねます。並行して海外の工場等へトークン製作を依頼してくれる会社にいくつか見積もりを作成してもらいました。日常的に、困ったら何でもTwitterに聞いているのですが、このときTwitterで「作れますよ!」とリプライ下さったBGPさんに、最終的にお願いすることにしました。ゲームルールの確定とトークンのサイズ・枚数の確定をもって注文をしますが、ロックダウンで遅延。ゲムマ当日に間に合わないかもしれない状況だったので、デモンストレーションだけでもできるようにと、Amazonで買ったトークンをスプレー塗装する週末。木肌に直接ラッカースプレーを吹いてもしみ込んでしまうばかりで色が付かないので、サーフェイサーを使うことを学んだりしました。それでも工場で作る品質に比べると、塗りの個体差が出ちゃうのでゲームにはちょっと不便です。注文したトークンが届くかどうか気がかりすぎて、ゲムマ1週間前にはトークンが来た夢まで見ました。幸いトークンは間に合いました。ありがたや。

・絵を描く

 ロゴ、コースター、カード、パッケージ、シール、説明書の絵を描きました。ポミケの時にまずいんくちゃんを考えたように、今回もなぜかマスコットキャラクターから練り始めました。いや、看板娘が居ると何かと良いことがありますので…。名前は安直にホップちゃん。ちょうどこの時期に「ダンジョン飯」を読んでおり、”代表的なパーティのメンバー”をプレイヤーの人数分デザインすることにしました。ヘルムについて調べたりして、グレゴリウス山田さんのブログの情報で助かったりました。他にもiStockで画像検索を重ね、参考にします。ちょうど良いものがあれば使用料を払ってお借りすることも考えましたが、しっくりくるものがなく、自分で描くことに。ロゴマークはまず自分で作った後、sessaでデザイナーさんに添削してもらいました。ロゴに使ったフォントはいろいろ探した結果、パンダベーカリーに決定。他にもいくつか候補になったフォントはありましたが、パンダベーカリーの漢字のカバー範囲がずば抜けていました。「髑髏」も出せるのはさすがです。この辺りで全体のデザインの方向性がだんだん固まってきた感じがあります。

 コースターは、当初は海外の醸造所のコースター風にしたいなと思っていたのですが、ゲームの機能上、キャラクターを描くことにしました。印刷所もいくつか検討して、印刷屋本舗さんにお願いしました。元はベージュ色の紙に印刷してもらうつもりだったのですが、白色の紙にベージュも含めて印刷する方がコストも安く仕上がると提案いただき、試したところ十分に良かったのでそのようにしました。コースターの厚みが1mmあるのはこだわりです。コースターはかなり「髑髏と薔薇」オマージュです。

 カードはPOPLSさんで印刷してもらいました。知らなかったのですがPOPLSさん、カードゲーム系の商品が充実してます。サンプル印刷の際、ベージュ色がコケて焦りました。普段はRGB入稿しちゃうのでCMYKのことよく分かってないんですよね。反省です。次に活かします。

 パッケージは作ったことがなかったので、何パターンか考えた後、グラフィックさんで試作→自宅で中身を入れたりバランスを確かめたり、用紙サンプル取り寄せたり→試作→…を繰り返して固めていきました。コンポーネントを見せるために透明スリーブを使う案も考えましたが、ゲムマ当日に長机の上にビアジョッキを並べる風景を作りたくて、縦長の箱にしました。この箱の想定外のメリットとしては、ゲムマの当日に「この箱を持って歩いている人がたくさん目に入って、なんだろう?と思ってスペースに見に来たんです」という方がいらしたことでした。想定していたけどやはり難点だったのは、箱詰めが大変なことと、箱の強度が足りないことでした。これは再版の際に、グラフィックさんにサンプルを送って仕切りを設計してもらうことで対策しました。

 木製トークンに貼って、黄色いディスクをコインに見せるためのシールも、かなりの数パターンを作って決めていきました。木製トークン自体にレーザー印刷するという方法もあったのですが、個体差が出てしまう(ゲーム中に見分けがついてしまう)可能性があると教えてもらい、選択せず。画像検索でコインを調べて、ゲームの世界観と、コンポーネントの情報量とのバランスを見ながら調整しました。

 説明書は最後にぎりぎりになりながら作り、ぎりぎりアウトで間に合わず、会場で箱詰めしました。(おひとり入れ忘れが判明し、後追いでお渡ししました。すみません)当初は居酒屋メニュー表っぽく三つ折りにしたいと思っていたのですが、箱に入れることを考えると微妙に合わなかったので、八つ折りで冊子風にしました。ルールブックの書き方はゲムマのカタログの記事も参照しました。

ポンコツビアディスペンサー

 上記のコンポーネントは、「パーティの一行に扮するプレイヤーたちが、酒場の同じテーブルにつく」情景を演出することを目的としてデザインしていきました。ボードゲームの、ゲーム中の操作には、世界観に合った理由付けがあると個人的に嬉しいのですが、「コインをめくるとビールか泡が出る」は、「ビアディスペンサーにコインを入れるとビールが出るけど、泡しか出ないこともある」にしました。このディスペンサーの見た目をどうするか悩み、これまた困ったら何でもTwitterに聞いているのですが、聖水自販機なるものがあると教えてもらい、それを模した外観にしました。

・当日のディスプレイ

 ゲムマ2021秋に初めて出展したとき、皆さんディスプレイが凝ってるな~というのが驚きでした。調べてみるとデザフェス等に出てらっしゃるサークルさんもいるようで、なるほどな~と思いました。とにかく会場でパッと目に入ることと、なにより当日スペースに居るのが楽しい状態にしたいな、ということで、準備しました。テーブルクロスはポスターラボさんでクソデカホップちゃんを印刷してもらいました。看板娘が居ると何かと便利です。色々調べる中で什器という単語を知り、段ボール製の樽の什器を注文しました。実際にスーパーとかのお酒売り場で使われてる商品みたいです。それから、ビアジョッキの形の大きなアルミ風船。ヘリウムで膨らませました。

 ゲムマは更衣室が必要なコスプレはできないので、私服として違和感のない格好か、上から着たりかぶったりするだけで着替えが済むものにする必要があります。ディアンドルは色々調べた結果、ドイツのMOSER Trachtenでめちゃくちゃ可愛いのがありました。AmazonUSに連携して決済できて便利でした。他にもディアンドルを扱っている会社がありましたがCOVID-19の影響で閉店してたりするところもありました。HalloweenCostumesでもビアジョッキの形のかわいいポシェットが売ってました。ドワーフ用にはヘルムやチェインメイル風の上着、斧を用意しました。レビュー欄が結構楽しくて、ガタイのいいおっちゃんの自撮り写真(頭にちょこんとヘルムが乗ってる)に「このヘルムは俺には小さすぎる」のコメントが添えてあったり、「1個欲しかったのに1ダース届きました」の報告があったりして笑いました。ちなみに風船の斧は1個欲しかったのに1ダース届きました。