tete-a-tete

夕凪ショウの同人活動の他、行った場所や観た映画などの記録です。

音とイメージ-2

怪獣の名はなぜガギグゲゴなのか/黒川伊保子 を読みました。

◆母音と人称について
アイウエオの印象
「あ」は明るく自然な音。誰かを見つけたときに「あ」と声が出る。存在を認める音、認識の始点。大和ことばでは意識の向う対象物を「あ」と呼んだ。ex)あれ/あなた/吾
「い」はまっすぐ対象に突き進む。「う」は体内にとどめる。「え」は平たい奥行き、へりくだり、距離感。「あ」が開放感における場の大きさを表すのに対し、「お」は存在感による物体の大きさを表す。(前者は星空、後者は巨象に対する感嘆音)
吾の音は単音では聞き取りにくいので、ボリュームアップ効果の子音Wを付加して「ワ」になり、リズム感を加える子音Rを組み合わせて「ワレ」となる。へりくだりの「e」の効果として、ワレは自分自身に対して用いると謙譲に、相手に対して用いると侮蔑にあたる。(eの前にyを足すと隔たりの効果はやわらぐ)
人名の語尾母音は印象を大きく左右する。
W音のボリュームアップ効果について。アレよりもワレの方がぼんやりとだが大きな存在になる。離れている他者は小さくても全体をはっきりと認識できるが、自分自身は大きくぼんやりとしている。輪郭をぼやかすW音はWhat,Whoなど英語では疑問詞に用いられる。


◆AIの記述言語PROLOGLISP
1985年、人工知能の記述言語を統一しようと国際会議が開催された。アメリカ陣営はLISPを、日本、イタリア、フランスの日欧陣営はPROLOGを主張した。PROLOGは曖昧な知識を曖昧なまま表現できるが処理速度は遅い。LISPは比較的単純であり高速処理に向く。アメリカの研究者は知識をいかに単純化し高速計算できるかが重要だと主張し、日本とヨーロッパの研究者は知識には単純化できない部分があり、曖昧さを含んだまま扱わなくては意味がないと主張した。アメリカの研究者が「突き詰めれば人間の知性なんてシンプルな数学モデルに過ぎない」と発言したのに対し、イタリア人らしき紳士が「そりゃ、アメリカ人の知性はそうだろうよ」とつぶやいた。
PROLOG処理系はフランス生まれであり、フランス語は音節が母音で終わる(開音節)傾向が強い。日本語はもちろん、スペイン語やイタリア語もそうである。一方LISP派の英語は子音で終わることが多い。子音が攻撃的であるのに対し、母音は発音方法として自然であり、音節を区切って発音すれば親密な印象になる。ex)ひ・み・つ
日本語は母音単音の語を数多く持ち、それらを左脳で聞く。日本語を用いない人は母音単音を言語優位脳で聞かない。つまり音楽や雑音を聞く領域で処理し、記号として認識しない。…云々
著者の書き方ではだから日本人はすごい、という結論で、そこに対しては「?」ですが、日本語は母音が多く語順も固定せずもちゃもちゃ、英語は音だけでなく内容もクリア、という印象は受けます。言語が違えばものを考える方法も違うだろうし、ことばですくい取る意味の幅や感情の種類も異なるでしょうし、人称の種類、敬語の種類なども、それぞれの文化に根差すでしょう。
「アイの物語/山本 弘」だったかな、人工知能たちが人間にはない感覚を表現するために新しい言語表現を作り出していく、という描写があったような。
あと関係ありそうな会話をしていたのでとぅぎゃったぺたり。