tete-a-tete

夕凪ショウの同人活動の他、行った場所や観た映画などの記録です。

スキタイのムスメ、Nihilumbra、それからグレイテスト・アイドル (ネタバレ注意)

★ネタバレがあります。一応白字にしておきます。

何故か唐突に現れたゲームしたい欲求がすごいです最近。
少し前にMachinariumをプレイして、これが名作だったので、また何かしたいなぁとググっていたところ、「superbrothers sword & sworcery ep」というのにあたりました。
作品レビューは以下のエントリが素晴らしいのでご参考に。
レビュー:スキタイのムスメ〜音響的冒険〜 ドット絵とリアルな音、素晴らしい演出が織りなす芸術 - ゲームキャスト iPhone
もうひとつ
iOSアプリゲームの超傑作「スキタイのムスメ」&「Nihilumbra」感想と考察

また8bit時代のゲームは情報量が少ない事によるシンボライズの部分が強く、これを多くの人は今のHDゲームと比較して「想像力が刺激される」と評価するがそうではなく現実を写し取るかのように描くことよりも、情報を絞り記号に近づくほどに意味というものは遥かにストレートに伝わるものだから。現実の象を一目見ることと別に、その象を「小さな象」「老いた象」みたいに最大の記号である言葉で捉えた時に意味が遥かにストレートに届くようなものだからだ。

敵がただの三角なのに超かっこいいとか、あれこれどこが素晴らしいのかを書くことは省きます。少し考えたこと。→ プレーヤーはまず、ゲーム世界と現実世界の橋渡しをするキャラクターから、「これは精神に関する実験です、あなたの精神を解放します」とか言われ(うろ覚え)、誘導に従ってポインタをとる。世の人の全ての思考が読めるという「絶世の大書」は、まんまTwitter指輪物語のように、これを葬ることを使命として与え、吐血する娘をポインタで誘導し殉職させるのがプレーヤー。(ゲームが進むにつれ強くなるのはあっても弱くなる(ライフが少なくなる)とか初めてだよ…)絶世の大書が消滅するとき、沢山の人の笑い声や話し声が聞こえたような?  先のリンク先にあった動画を見れば、「あなたたちはこのゲーム/実験に参加する機器(PC、iPhoneiPad)を既にお持ちのようですね。その購入理由は?メール?SNS?」そしてそれを葬り去るのが”ゲーム”の目的。やばい。moonがそうであったように、インターフェースを通じて行うゲーム、ゲームでなければならなかった構造が、うわああ  SNSを葬り去った後にコズミック・フレンドになるというのは…? 実績解放したらドットじゃない設定画が見れるって読んだのだけど、iPhone版では無いのかな…?

で、「Nihilumbra」をDLしました。

ネタバレ → 横スクロールゲーム。虚無から産まれ、独立を望んだ主人公。それを許さず追い掛けてくる虚無。(かかしに化けるの、良い!)お前なんてなんの価値もない空っぽだと繰り返すテロップ(ゲームで、こんなに否定的なセリフを繰り返されるなんて初めて…)を振り切り、逃げ回る自分のせいで、世界は無に犯されてしまう。  初めは雪山、次に森、砂漠、火山を超えて、街へ。雪山では速く走る白色の能力、森では高く跳ぶ緑色の能力を、砂漠では接着し静かに歩く茶色の能力を得て、主人公は逃げ続ける。その先の火山ではなんと敵を焼き殺す赤色の能力を手に入れる。逃げるだけではなく敵を殺す(同じ場所を徘徊する単純なプログラムだから、こころが痛む)力だ。  たどり着いたのは無人の街。ここで手に入れるのは人工の命を動かす黄色の能力。「お前は悪くないが、原因はお前だ。破壊は望まなかったが、生きたいと望んだ」「今までの道のりは徐々に暑くなってきていた、この街は火山より恐ろしく雪山よりも寒々しい…」「かつてはここに人が住み街を作った。元あった自然を壊しはしたが、街を作った。お前はどうだ?無には帰しても何も作り出さない」ついには主人公は右に進むのを止める。こんな狂気は終わりにしよう。自ら虚無に飲まれるが、しかし、虚無から拒絶される。「旅で得た色たち、愛、怒り、喜び、悲しみ、後悔と赦し…お前はもうからっぽではない」…やばい。  各色の能力を取り消す虚無の能力(もともと持ってる)が、折々で重要な役目を果たすのも良い。虚無といえば、はてしない物語、それからCCさくらの無のカード、反転世界のギラティナ。…うおおお  この後、世界に撒き散らした虚無を回収するパートに入るのですが、テロップが出ないただのアクションゲームになってしまうようで、急にやる気が無くなって…しまいした…。横スクロールアクションにテロップと、進む意味を持たせることで、この感動…すごい…。


スキタイのムスメがツボすぎて、スキタイのムスメのことしか考えられなくなりました。一日中サントラ聴いてます。ドット絵を真似てミクにしてみました。こういうことしちゃ怒られるのかな…大丈夫かな…

◆それから、以下のエントリを読んで、「Finding Teddy」をDLしました。iPhoneにしてて良かった。
”音”から全てが始まる「Finding Teddy」感想と考察・iosアドベンチャーゲーム研究
これ、VOCALOID 初音ミクを主人公にしたら、すごく深いものができるんじゃないのか?と、思って、プレイ中です。

◆ちょっと話が逸れますが、”調教すげぇ”Mitchie Mさんの「グレイテスト・アイドル」を聴きました。
歌詞も曲調も個人的な好みで言えば別に普通なんですが、ミクの歌唱に圧倒的実在感があって、聴いてると妙に精神が高ぶります。(「別に普通」というのは、「すごくない」ということではなく、アクがなく受け入れやすいということです。)
ぼかりすを通した人間らしさではなく、初音ミクとしてのリアル。もう何年もミクばかり聴いてますが、それでもこのタイプの「神調教」は無かったように思います。

初音ミクとしてのリアルって何でしょうか。ささくれさんなら「ミクならこんな歌詞を歌いそう」、livetuneさんなら「ミクの声ならこんな曲調が似合う」、というように、どの方向でミクらしさが達成された(と私が感じる)かは様々です。ハチさんなら以下のようにオケをGUMIに合わせ、Treowさんならミクの声を素材に表現を研ぎ澄ます。

2013年10月マイベスト10選 - ボカロとヒトのあいだ
BARKSのインタビューでハチ氏は「自分で歌うのと、ボーカロイドで歌う曲を作る事の違いを改めて認識する機会となりました(20131030)」と応えているとおり、本作はボカロを前提にして作られている。人(自分)が歌う曲のボカロバージョンでないことは重要である。ボーカルの声質やクセや息づかいによって当然ながらオケも変わる。全てはボーカル(GUMI)に合うよう調整され、最適化されていく。

その方向性が、今回は調教だった…?
◆現実味を感じるのは、ミクの声と、もうひとつは生活音です。電話や車の音が入るところ。(ぽわぽわさんの「ストロボハロー」イントロのように、本来楽器でない音の手触りを楽しむのが好きですが、Mitchie Mさんの場合はまた違う装置、情景描写、観客を引き込む演出?として働いているように思えます)
「プルルル」とかこんな文字でさえ、ケータイの着信音だと判別できます。(ドット絵のように、単純な記号で。)曲中の生活音はとてもリアルに感じられますが、普段はもっとぼんやり聞いてる音たちです。道端の草を掘り出して土を全部落として細かな根を目の当たりにするような、非現実的な強調がなされてるのでしょうが、喉から声が出てる感じが強く印象づけられます。いや、喉からじゃなくて、お腹かな?インタビューにあった「黒っぽさ」?
ハリウッド映画で観る超リアルな架空近未来都市、かな…?すごく本物らしいと思うけど、それを本物だとは思わないでいられる(偽物だと思えなくなってしまうとボカロの面白さは急に霧散してしまう)。間違いなくミクの声なんだけど、独特の調教だと感じる。
歌唱の拙さが演じる役に似合う、まっすぐな声をケロケロにかけて活かす、オケを合わせる、極限まで滑らかに引き伸ばす、そういう方向ではなく、「人間が歌っているように聞こえる、でも本物の(歌手ではない一般の)人間よりずっと上手な演技」というのでしょうか。ドラマの俳優さんが演じる人々の日常はリアルですが、視聴者である私たちはあんなに滑舌も良くないし感情だって上手に表せない、そういう乖離があります。その意味で「初音ミクが声優のようにしゃべる〜」というのはまさに正しい表現だったと思います。
スパッと表現できなくてもどかしいですが、人形のミクを愛で、ミクのコスプレも愛でていたところに、そのハイブリッドが出てきちゃったみたいな衝撃が…あります…。
◆長くなってしまったんですが、私の中の「ミクらしさ」は、音よりも意味によるところが大きくて、先のFinding Teddyにあるように、音と言葉が遷移する地点を表現できれば、それは最高にミクらしいと思うのです。
プレーヤーは、「moon」ではゲーム世界へ落ちてキャラクターとなり再び現実世界へ戻り、「スキタイのムスメ」では神としてキャラクターに使命を全うさせ命を奪い、「Nihilumbra」では無の欠片として産まれ直し無ではないものへと成長したわけですが、プレーヤーがキャラクターを操作するという図式は、VOCALOIDユーザーがVOCALOIDを操作するという図式にそのまま当てはまります。(夏コミで出した「三日月錠」もそういう構造への萌えの果てでした)
ゲームをしてキャラクターを動かす事自体の意味が設定されていればメタフィクション的でとても嬉しい私としては、これめっちゃ良いやん!!と思ったわけです。
プレーヤーがミクを操作して、初めは音の欠片でしかない存在に姿や物語を与えていく、その過程に音と言葉のパズルを配置し、……妄想が捗ります!
という訳でミクが主人公のパズルアドベンチャーゲーム作りたくなりました。
スキムスもNihilumbraも、メタフィクションで命を描いたところが、こんなにも琴線に触れたのだと思います。これをミクでなぞると…すごいことになりそうですね…?
積ん読崩すとか言いながらゲームしてる…
◆moonをプレイした時の興奮はここに書きなぐってあります。関連として。
★追記
以前「子供の野菜嫌いをなおすゲーム」を体験しました。ヘッドセットをつけ、大きな鉄砲で画面中のモンスターを倒すというもの。野菜を口に入れて噛むと、ヘッドセットがその振動を測って弾の数とする、ガンを構えると顔の前にカメラがきて、笑顔を感知して発砲可能になる。ゲーム世界に働きかける方法は増えていきそう