tete-a-tete

夕凪ショウの同人活動の他、行った場所や観た映画などの記録です。

moon #moon2

ひと月ほど前、moonというゲームがすごくいいと後輩から聞きました。なんでも主人公は勇者ではなく、勇者の殺したモンスターの魂を集めるらしい。非常にそそる。

で、すぐにググりました。
moon(PS) - ニコ百 http://dic.nicovideo.jp/id/113831
これはやりたい。という訳でプレイしました。

moonの話をする前に少しだけ… そもそも私はおそらく、ゲーム、RPGに向いていないタイプの人です。
(今までにプレイしたことのある本数も少なく、色々と失礼なことを書いているかもしれませんが、大目に見てやってください…。批評ではなく感想です。m(_ _)m)

PRGに向いていないというのも、私は、
見ず知らずの相手のお使いをしなければならないのがめんどくさい、フィールドを歩いているだけで所謂ザコキャラが出てくるのがめんどくさい、装備を考えるのが、レベル上げがめんどくさい。
ポケモンでも草むらを避けて、あるいは刈って歩くほどでした。当然、レベルが上がらないまま進むため序盤の中ボスで即詰み、そのまま積みゲーとなってしまうのです。
アクションも苦手で、運動神経(ゲームに使う反射神経?)が悪いという意味もありますが、例えばいつだったか電器屋の店頭で非常に後味が悪かったのが、試遊を勧められたので断るのもどうかとしぶしぶやってみた時のこと。技の練習ができる、というものだったのですが、無抵抗なキャラクターを殴るのは心が痛みます。音ゲーやるのは楽しいんですが、アクションゲーには楽しさを見い出せない。
という訳でPRGの何が苦手かというと、戦闘シーンが苦手なんです。そもそも数字が好きじゃないのもあって、残りHPを気にしつつセコセコするのがなんとなく嫌で…。
RPG自体は好きなので、戦闘抜きのRPGが無いかと友人に聞いてみても、「それRPGじゃなくね?」と。
まぁ、戦闘のないRPGを探していたと言っても、心優しい人間なわけではなく、前述の通りただ単にめんどくさがりなんです。なぜめんどくさいかと言えば、それに意味を見い出せないから。
初めのうちは夢中になってプレイしているのですが、数時間経って「あー。何やってたんだろ」と賢者タイム。読み終えた本とか描いた絵とか、そういった成果物が何も残ってなくてやや萎える。 
ゲームの物語自体に感動した、映像の綺麗さに納得した場合はまた違いますが、それってゲームじゃない気もするし。ノベルゲーはゲーム性より絵や話を楽しむものだからまた別として…。

ともあれそんな時に”戦闘のないRPG”をうたったmoonを知った私は、もう運命だと思ったわけです。

実際プレイしてみると、すっかりmoonにハマりました。何時間も夢中になってプレイしてしまう、という意味でハマったというよりも、深く感銘を受けました。音であるVOCALOIDが歌について歌った時と同じ面白さがありました。登場人物の物語やBGMが味わい深いのであれば、その表現方法は小説やアニメでも良かったはずだけど、moonにはゲームでなければならない理由があった。ゲームでゲームについて語る、プレーヤーにプレーヤー役を演じさせる。それによってフィクションが現実と少し混じる、本物の嘘になる、そんなメタフィクション的な作品でした。


以下ネタバレありますので注意。


■さて、moonが具体的にどういうゲームかというと…
「ゆめにっき」と「どうぶつの森」を足して2で割ったような印象で、静かな気持ちになります。
余計な操作説明は一切無く、セーブすら感じさせない。
moonのプレイは日常生活や散歩に近くて、お気に入りの音楽をかけながら一人でうろうろしたり、あるいは無音のまま鳥の声と自分の足音を聞いていたり。
普段の生活でも、自分の足音と鳥の鳴き声だけ聞こえてるとmoonな気分になります。ぼーっとしてると人の話し声もmoon語に思えて聞き取れない。※ 

それからゲームをしていてあまり無いような、待つという行為が特徴的だなと感じました。まったり、待ったり。
序盤、行動可能な時間が短い間は、「もっと遊びたい、もっと遠くまで探検に行きたいのに、家に帰らなきゃいけない」ともどかしくなり、
逆に長時間行動出来るようになったあとでも、「まだ余裕はあるけど今日は家に帰って寝よう」と帰って、眠れば夢を見て。
フィールドを歩いていて安心感があるのは、こちらも相手に危害は加えないし、自身も加えられる心配はないから。

■だらだら感想を書く前にぺたり。ところどころ心に響いたところ抜粋してます。

【『moon』再論 〜いつか、ゲームに「ラブ」がやどる日まで〜】より
抜粋した際にTwitterに引用したため140字内に要約しています。…は中略の意です。

『moon』が採った、字幕による意味伝達と既存の言語系で分節不能な音声とを衝突させる方法は、そうした糸井の直観と底を通ずるものでありましょう。彼らの見出した演出的直観をあえて言語化するなら、言語中枢の処理を受ける以前の、聴覚刺激としてのことばの豊穣さを見過ごさなかった ※

…僕らのこころに喚起してくれた「てつがく」を見えるようにすることです。…住人が、昼夜曜日の繰り返しの日常をいとなむその「生きざま」に寄り添うことで、それが何の見立てであるのか誰にも答えられない「ラブ」という不思議な定量パラメータを収集することにあります。 

世界が決して特権的な存在としてのプレイヤーのために準備されているのではなく、自らが歩み寄らなければ見えない世界がある…決して安易に立ち入り、肩代わりしたりわかった気になったりすることのできない、「他人の人生」というものの陰影。あるいは…コミュニケーション不能な他者の存在。

子供のころをゲームとともに過ごしたことのある人ならば誰もが経験したことがあるだろう、「ゲームなんて」の無理解との対峙。自分にとってはまぎれもない真実である、こころのなかの世界に対する理不尽な無視。」

空想世界のなかに留まるかぎり…すでにつくられたイメージを蕩尽し、縮小再生産をしかなしえないのだという、ひとの精神についてのエコロジー…。一見「人の想像力は無限である」という…イメージをもたれがちなファンタジーという表現の本質は…ひとのこころの妥協のない写像なのだと思います

もうひとつ【ゲームを捨てよ、街に出よう〜「MOON」の過激な批判】より

「ゲームなんてしないで…」ではなく「ゲームなんてやめて…」であるところが、実は重要なのかも知れない。多分、ゲームをしてからやめるということと、最初からしないということは、まったく違う。「MOON」が否定しているのは「ゲームをすること」ではなく「ゲームに入り込んで日常を忘れること」なのだ。ゲームの中の約束にとらわれ、日常の常識を忘れ、そうすることの意味を考えぬままに閉じた世界に君臨すること…

■感想

キャラクターについて言えば、アニマル達では、はずかし岩とイースーチーが特にかわいかったです(^-^)v
人物ではワンダとフローレンスの関係、フローレンスの哲学的なセリフ。
おばあちゃんにアイテムを見せた時の「おばあちゃんは目が見えないからわからないよ」というセリフの物悲しさ。おばあちゃん。゚(゚´Д`゚)゚。
食パンが好きと言いつつもクロワッサンを食べているホームレスのガセ(クロワッサンの方が少し安いのだ。かと言ってパンを差し出しても俺はものごいじゃねぇと突っ返されるw)
Fake-MoonでもMoonでも、噛み合わない王様と大臣
主人公はギャルゲではモブっぽくなるけど、moonではモブを通り越して透明の身体、つまりプレーヤー自身。主人公の声は無く、セリフもごくわずか。

あとかなりツボだったのが、おしゃれな下ネタw 小学生でプレイしていたら意味が分からなかっただろうなw
ペロゴンの飼い主の女の子に「お兄さんもペロゴンみたいなかっこいいトゲがあればいいのにね」って言われた気がするw でも図鑑曰く雄にはトゲが無いw、フローラの寝顔を見た後のお説教もそうだし、勇者の伝説の兜がアレだったりw Fake‐Moonとの差異もいちいちハイセンス。

丸く平らでくるくる回るムーンワールドの、「奇盤」というプログラムにすぎない存在という切なさ。(moonというそっけないタイトルでは検索に引っ掛かりにくいよ!と思ったけど納得のタイトルです)

奇妙な、でも愛おしいキャラクターたち
(奇妙なというのは外見が奇妙、ダークな雰囲気を持ってるんですが、透明な主人公も自然に受け入れられる、心地の良い世界でした。)
さらに、どんなに愛おしくても最終的には作り物にすぎない、ってとこでさらに愛しさが募りました。ミニチュアや人形、メイド、ボーカロイドもそう。彼ら自身には何をどうする力も無い、罪が無い、から?

■余談ですが、moonは15年前のものだからグラフィックが今に比べると精緻すぎないのも、想像力の余地が残って良い。
ニコ動の実況で青鬼とか流行ってて、ドット絵なのに本気でびっくりしたり怖がったりしてしまう。
マンガ・アニメ的なキャラクターイラストであれば絵柄が古びてしまっただろう。精密に描けば良いというものでもないな、と思った。
うまく言えないけど、感じ取るリアリティは、写実的に描いたり、感覚を上手に刺激したりすれば高まるものではないのかもしれない。


最後の方ぐだぐだでしたがここまで読んでいただいた方、ありがとうございました。

【発売から13年。記録より記憶に残るゲームだった,あの「moon」の続編が始動へ?】

制作者の方々、素敵な作品をありがとうございました。人生で一番良かった、私の感性に影響したゲームでした! 再販、続編、待ってます! カクンテ(^ヮ^)ノ

ジンジャーPにもカクンテ!