蛍を見に行きました。
真夜中、車を降りると水音と蛙の鳴き声、自分の足元はおろか手元すらよく見えない暗闇に、ふわふわ舞う黄緑の光点。
轍が左奥へ曲がり進み、左右から雑木林のシルエットが覆いかぶさります。半月なのに驚くほどこうこうと照らす月の光で、辺りの雲がぬらりと照らし出されていました。
上空は風があるのか、雲がかなり速く動いていて、空だけ見ていると、自分の立っている地面が移動しているようで面白い、なんて思いましたが、実際地球も動いていなくはないですね。
雲はあるのに沢山の星が見えて、星座を思い出すには多すぎました。
この辺りは星がよく見えます。夜中に小高い場所に立つと、地平線に近い部分にまで、天頂と同じくらいの星が見えるので、空がドーム状に感じられず、自分の目の前から大きな壁が立ち上がるような妙な圧迫感があります。
この時も同じように、低い月と距離感のよくわからない星空でした。
もう夜遅すぎたのか、蛍は樹や茂みの奥にじっと留まって明滅していました。随分久し振りに蛍を見ました。
帰りに走った、乗用車一台がぎりぎり通れるほどの細い道、開けた窓からの冷たく湿った空気が頬に当たりました。
