tete-a-tete

夕凪ショウの同人活動の他、行った場所や観た映画などの記録です。

福岡古楽音楽祭(土曜日)

9月のひとつめの三連休を福岡で過ごしました。福岡古楽音学祭が目当てでした。
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まず、土曜日。地下街で朝ごはんを食べてからレッスン会場へ。
友人がヴィオラ・ダ・ガンバを弾いていて、今回ヴィーラント・クイケン氏のレッスンを受けるとのことで、その見学に行くのでした。
道中、立ち寄ったファミマですかさずミクくじを引く人たち。緊張する友人。
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レッスンは、草間彌生キース・ヘリングのオブジェのあるビルの、小さな一室で行われました。見学者は10人強、レッスンは英語でした。
友人はもう緊張でガチガチで、後から考えると基本的なことばかり指導されていたので残念、とのことでした。
レッスン中にメモをとっていたので、書き出してみます。
◆弓は弦に対して常に垂直に、1cmほど弓毛を浮かせてから弦につける、一つの音ごとに弓を離し、外側に抜ける時に力を抜く。弓を引き返すときなど、キキッと引っかかる音、余計なきしみや過度な装飾はよくない。
◆正確に一つの音だけを鳴らすことを繰り返し強調されていたように思います。私のメモには針先を右に倒したマチ針や、先端を右に倒したしずくの絵がありました。音のイメージでしょう。たぶん、マチ針の頭が子音で、針が母音。
◆Don't be too wild, be simple, sharp, 頬をなでるように弾くんだよ、とおちゃめに示してみせるヴィーラントさん。かわいい。
◆ヴィーラントさんは上半身が全然動いておらず、ガンバを脚に乗せてぺぺっと弓を動かしているだけに見えます。でも一音の響きがすごく深い。
◆左手は、一番外側の弦は小指で抑えて指運びを楽なように、メロディラインを残すために指は置いたままにする。左手でビブラート(っていうんでしょうか)をかけるのでなく、弓毛を軽く薬指に乗せて、弓毛を舌のように動かしてしゃべらせる。
◆弾き方に関して、人が声を出す時と似たような表現がされていました。(後日一緒にヴィーラントさんの演奏を聴いた友人曰く、その友人は長く声楽をしているのですが、弦楽器みたいな声が出せたら理想だよね、とのこと)
◆あと、書道やスポーツに似た印象を受けました。
いつだったかバラエティ番組で、平手を突き出してお盆を打ち、100万円ちょうど落とせば賞金としてもらえる、とかいう企画があり、その練習として、打ってすぐ手を離すように、と、お盆に剣山を付けていたのを思い出しました(なんだそれ)力を入れて、すぐに抜く、ということ、ですね。美しく力ある動作には力を抜くということが大事で、脂けの抜けたおじさんがやはりイイですn
◆えー、それから、ヴィーラントさんが使っていた擬音語、やららん、やん、たらりー、ティン、どゅるりん、じゅるりん、といった数々、新鮮でした。
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その後少しお茶をして、友人の働いていたお店でお昼を食べました。歓待ありがとうございました。
その足で一年ぶりにギャラリーモリタさんへ。ピエール・バルーの”effet pollen(花粉現象)”という言葉のお話が記憶に残っています。
創作が連鎖する、ミームが伝播する、そういう言葉ですね。植物の種やきのこの胞子のイメージはありましたが、花粉はなかったな…。飛沫感染っぽい…。
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そのままけやき通りを過ぎて、美美で珈琲をいただいて、夜のコンサートへ。
HPやチラシを見て、古楽祭のメインビジュアルは毎年有元利夫氏の絵なのだなー、と思っていたら、入場時に手渡されたパンフレットの表紙はフェルメールの「音楽の稽古」でした。
ホールに入ると、二台あるチェンバロのうち一台には、この「音楽の稽古」が描かれていたのですが、よく見るとちょっと違う。
構図そのままかと思いきや、男だけ左側に移動していて、フェルメールらしく右端にはカーテンが描かれていました。
チェンバロの蓋の形に合わせた改変なのでしょうが、ありなのかwと、面白かったです。
もう一台は、中に鳥や花の絵が描かれていて、それが蓋の光沢に反射して映る、というものでした。
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コンサート演目は「バロック音楽都市巡り」、ライプチッヒ(ドイツ)からJ.S.バッハ、ローマ(イタリア)からコレッリハンブルグ(ドイツ)からテレマン、パリ(フランス)からF.クープラン
勝手な感想を書きますが、よく知った方からすれば荒唐無稽かもしれないので躊躇われるのですが、書きます(;´Д`) 馬鹿にしているように聞こえたらごめんなさい。
◆ひとつめは、灰色の岩を削って作られた見事な教会の、高い天井から降ってくる、生活感があるとすれば雑多ではなく質素な、そんな印象でした。
◆ふたつめは、解説の通りいかにも貴族な感じ。悲しそうな旋律も、本当には悲しくなさそうで、ロマンス映画で恋が叶わないシーンの悲しさっぽい。官能的というのでしょうか、まとまって流れる音が、水流の豊かな渓流のようでした。音楽を聴いた時はたいてい、色や質感のイメージとして受け取るのですが、今回は「荘厳」とか「豪奢」とか、概念?ぽいものが浮かんだので意外でした。
◆みっつめ、個人的にはこれが一番好みでした。こちらも、悲しそうな旋律も、本当には悲しくなさそうでした。というのは、南極の厳しさにペンギンの卵が凍りついたとか、確かに人間から見れば「ああなんて可哀想!」なんですが、自然界に生きる動物たちにとってそれは普通のことで、そういう意味で本当には悲しくない、という感じ。(書きながら、伝わる気がしない…orz)
◆よっつめ、普通でした。頭がいっぱいだったのか、慣れてきたのかわかりませんが、楽しんで聴いたなーという記憶のみです。
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演奏者さんについて言えば、とにかくヴィーラントさんが萌えキャラでした。遅れて出てきて、ちょっと椅子にひっかかって、てへぺろ的な場面とか。
演奏が終わって帰るときに、少し芝居がかった仕草で出口を譲り合ったり、和気あいあいといった感じ。あとリコーダーの方がやたら笛を回してました。

曲目の合間の解説も楽しく、演奏者さん方も客席の方々もリラックスしていて、楽しんで聴きました。
反対に翌日のコンサートではえらいことになるのですが、またそれは次のエントリで…。
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晩御飯では甘いイカをいただきました。まさかの出会いがあったりして、わいわい。さて二日目へ(=人=)