tete-a-tete

夕凪ショウの同人活動の他、行った場所や観た映画などの記録です。

福岡古楽音楽祭(月曜日)

◆月曜日は古楽祭には行かなかったのですが、わかりやすいのでタイトルにしました。訪れた石橋文化センターの写真ぺたぺた。いいお天気でした。

◆月曜日は、久留米の石橋美術館へ足を延ばしました。ふらふらできて楽しかったです。
いいとこでした。あっさりしてて、でもよそよそしくはなくて。シンプルな建物で、いい絵が沢山あって。手入れはゆき届いてるけど、ドヤ感はない。美術館には珍しく背もたれのあるソファが配置されていたのですが、混まないんでしょうね。いいことです。トイレの個室の鍵が、丸くて持ちやすく、指先を巻き込まないデザインでした。クロークの鍵もギザギザじゃなくて平らでした。美術館に来た人が直接手を触れる部分って少ないし、考えられてるんだろうなと思いました。
設計は菊竹清訓氏だそうで、ググったら九州国立博物館もこの方の建築物とのことで、なんとなく納得がいきました。安藤忠雄氏とは真逆の印象です。

◆エントランスでは、去年の秋に福岡市美術館へ行ったときに見て、名前が思い出せなかった彫刻家さんが、豊福知徳さんだと知れました。
初めの部屋は黒田清輝、浅井忠、藤島武二(猪熊さんの先生って知らなかった)の油彩画で、ここが一番良かったです。藤島武二氏の「旭光(新高山)」、それが山と旭だとわかるギリギリのところまで簡略化されていて、それでもたっぷり情景を伝えているのが、かっこいいです。三方を絵に囲まれて、真ん中のソファでしばらく寝てましたw 真面目だけど力んでないのがここちよく、安らぎます。佐伯祐三さんも結構好きです。
別館に仙突さんの絵も三枚あって嬉しかったですw それから坂本繁二郎氏の静物画がモランディに似てたのですが、反射光かな、青を乗せたりしてるのが面白かったです。
◆企画展のタイトルは「画家のことば」で、画家が絵について語った言葉、手紙の一節、詩の一片が添えられていました。それらが全ての絵にあるわけではないのも、力が抜けていい感じです。大抵の展覧会では解説が付きますが、あれも良し悪しだなと思うので…。ジャン・アルプの絵にあったパネルで、「宇宙的な形――卵、つぼみ、軌道…」というふうに、楕円形のついての連想が書かれていたのが、似たような方法をとったことがあるな…と思い出しました。ローランサンは詩の技法がカノンっぽくて記憶に残ってます。

◆素晴らしいのが美術館だけでなく、美術館のある公園もそうでした。絵に描いたような憩いの場となっていて、親子連れでピクニックしていたり、小高い丘でご夫婦がワインを開けてたり、芝に座ってスケッチする人たちも幾人か。噴水の近くの木陰、少し高くなってるとこに並んで腰掛けて、2人で話し込んでる中学生くらいの私服の女の子。ご婦人方はランチと会議。バラ園をのぞけば、作業着のおじさんたちが3人、仲良さげに話しながら剪定してらして、それから、合唱のリハーサルらしき声も聞こえました。
園内の広い芝には、樹の影がくっきり落ちてるのですが、トンボが飛んで赤い実が光って、秋の雰囲気も混じり始めてるのが、いい季節に来たなと…でも薔薇の咲き誇る時期にも来てみたいです。下の写真は薔薇じゃないですが、薔薇のチョコレート食べてから、薔薇の香りが密かにマイブームなので…

◆夕刻、知人に会って、三日月錠の反省会などしましたw とにかく詰め込みすぎだったなと思いました。パートをそれぞれ分けるか、ページ数を増やして丁寧に描写するかしたほうがいいのでは、とか。
下の写真は某方がレコードを漁ったけやき通りのお店。

…幸せが致死量でもう終わってもいいみたいな週末でした。夜風は涼しい。

           ◆◆◆
最後に、細々と思ったことなど。
◆ガンバを弾く姿、切れない木こりみたいです。(まあ実際楽器は木なんですが)
◆あと、友人のガンバは女性、ヴィーラントさんのガンバは馬(まあ実際弓毛は馬なn)みたいでした。ガンバって形からしてなかなか…ですね。友人は「頼む鳴ってくれ〜」という部分が見えなくもないのですが、ヴィーラントさんの方は、楽器にも風格があって、「互いに信頼しあってるパートナーだよ、今はね」って感じでした。
◆演奏中、弦楽器を小刻みに弾くところが空耳で「こきざみ、こきざみ」に聞こえ始めたんですが(こういうフレーズ 時々あります)ko-ki-za-miで、押す-引く-押す-引くという弓の動きで、引く摩擦音が i の音に似てるんだと思います。
◆コンサートを聴いてる時、音は肺の裏側、背骨の両側に響く感じがしました。クラブイベント的なのに行ったときは、胸骨の辺りが振動する気がするんですが。
◆それからメモに「無地」って書いてあったんですが、これは何のことか思い出せませんw
◆確かに絵でも10年経っても忘れられない感動ってのはあるんですが、あれはもっと幸福で夢見るような気持ちで、日曜日のは絶望だったのはなんでなんですかね。
◆友人に聞くと、クイケン一家ほどの超人レベルになると、音量の大小で強弱を表現するのでなく、音量はそのままでも響きの大小で強弱を表現するとか言っていてやばい。
◆同じミの音でも時と場合によって違う弾き方をするのだそうです。パートごとに音をやりとりするのだとか…。
◆日曜日のコンサートでひとつだけ「これいい!」ってのがあったのですが、テレマン パリ四重奏曲 第6番 ホ短調 でした。長い。長いので友人との間では「パリカルの最後のやつ」と呼んでます。ひとつの楽器がひとフレーズ弾いて、同じフレーズを別の楽器が繰り返して、その後一緒に重なる、その流れがいいです。
           ◆◆◆
土曜日にお茶した時に、”夕凪さんのお勧めしてる曲とか聴いてると、メロディラインとベースラインがそれぞれ違って、絡み合ってるのが好きみたいだね”って言われて、その時はよく意味がわからなかったのですが、後で友人に解説してもらって合点がいきました。ホモフォニーではなくポリフォニーということだそうです。
それから、デジ絵でいうペンの入りと抜きというように、フェードイン→フェードアウトする音が好物なんだなと再確認しました。(現代の奏法では一定の大きさで始まって一定の大きさで終わる音がオーケストラで良しとされるとか…ちょっとこの辺り完全に受け売りなので自信ないです。)不始末さんの「架空のうた」のボーカルにあるような、研ぎ澄まされて、(使い手からは)自由に、(歌い手からは)ただ操作されて、引き伸ばされる音、たまらなくいいです。
この二点に置いて、古いタイプの音楽が好きなのかなーとか… 指摘されるまで意識にも無かったので、検証が必要かもしれません。
           ◆◆◆
いくつか漫画読んだりしました。
◆「僕は問題ありません/宮崎夏次系」
言葉だけでなく絵もあって、でもコマとコマのあいだに切れ目がある、漫画じゃないと伝わらない空気感あります。絵やキャラは個性的だけど、お話は王道で、ちゃんと筋が通ってるいて、まともで納得がいきます。何か問題を抱えた人たち(誰でもそうなのですが)にとって、肯定的なメッセージ。どのラストも、下がって下がって、最後にちょっと上がる感じのハッピーエンドです。初老の先生と女学生のお話がツボです。
◆「めぐり逢う朝
師匠と弟子・マレが、同じく愛した人を亡くす経験を共有することで分かり合う…というお話。
衣装については、小さなボタンが狭い間隔で並ぶデザインが多く、時々大槍さんの描く衣装で見かけるのはこれか〜と。
ライティングが、昔ドレスデン王立美術館展で来日していたカスパー・ダーヴィド・フリードリヒの「月を眺める2人の男」を彷彿とさせます。
絵筆の音を聴きなさい、画家の絵筆の動きを弓の動きに取り入れるのだ、と、画家リュバン・ボージャンを訪ねた場面でのセリフが記憶に残ってます。
火の灯ったロウソクの前にグラスが置かれ、そこにワインが注がれるシーン、ここが一番うまかったと思います。ロウソク立てにワインを注ぐのかとひやりとした次の瞬間、赤い液体の向こうに火がゆらぐ、映画ならではの画でした。
こちらのブログでこれらの場面のキャプチャがありました。
ちなみにマレが師匠を訪ねて弟子入りのお願いをする場面で弾く曲、友人がヴィーラントさんのレッスンで弾いた曲だそうでしたw なんということでしょうw
◆前のエントリで少し触れましたが、「スローターハウス5/K・ヴォネガット・Jr.」も読みました。あと「すべてがちょっとずつ優しい世界/西島大介」「銀の匙中勘助」「ちろり/小山愛子」「分校の人たち/山本直樹」…とか。良かったら読書メーター覗いてください。
それでは終わります…